最近は撮り溜めた過去の作業紹介ばかりだったので、ここらでリアルタイムなヤツを…。
1976年式XLCH1000・アイアンスポーツスターのキック抜け修理をご紹介します。
タンクのストライプ=通称レインボーでおなじみの年式ですが、こちらの車両はあまり見かけないオレンジ色です。アメリカらしいポップな色使いですね。
さて、このXLCHですが、始動はキックオンリーという非常に硬派なモデルです。
しかしアイアンスポーツでは、このキックで苦労する方も多いかと… ↓の動画をご覧ください。
このように内部のギアが上手く噛まず、キックを踏んでもエンジンに動力が伝わりません。
この車両は完全に空回りしていますが、症状が出たり出なかったりの状態が一番危険です。
本気でキックを踏み込んだ瞬間にギアが外れると、ヒザが逆に曲がって悶絶必至です(経験者)。
一度不調が出始めたら、ヒザを痛める前に早めの修理をオススメします。
これはもうアイアンの持病のようなもので、原因の見当は付いています。早速分解します。
ドレンボルトのマグネットには鉄粉がびっしり。オイルもかなり汚れています。
オイルを抜いたらプライマリーカバーを外して分解を進めます。
この年代ですと、ビッグツインやXLHはエンジン側スプロケットにダンパー機構を備えますが、ダイレクトなレスポンスを生むソリッドなスプロケットがXLCHのキャラクターを物語っています。
さて、プライマリードライブを外すと、キックアームと連動するクランクギアが確認できますが…
ガッタガタです。ナットを緩めたわけでは有りません。
ナットの裏表が逆ですし、ロックタブもカシメ不良で機能していませんでした。
クランクギアの先には、クラッチシェルへと動力を伝えるラチェットギアが有ります。
その名の通り、キックを踏んだ時は力を伝えますが、アームが戻る際には空回りします。
回す側がガタガタであれば、回される側にも負担が掛かるわけで…
やはりブッシングが摩耗してガタガタです。これではギアの噛みあいが悪くて当然です。
ラチェット部分をアップで見てみましょう。スロープ形状の側面(⊿←ココ)で動力を伝達します。
本来は垂直面でなければいけないのですが、摩耗して角が丸く滑ています。
接触する面積がほとんど残っておらず、力が掛かるとすぐに噛み合いが外れてしまいます。
クラッチシェルの裏側にも、同形状のラチェットプレートがリベット留めされています。
やはり噛み合い部分の角が滑ているのが分かると思います。
プレス成型のため、伝達面にやや傾斜が付いているのも滑やすい原因の一つかと思います。
予想通りの原因でしたので、ラチェットギアAssy.の交換で対処します。
カシメを削ってリベットを抜き、古いラチェットプレートを外します。
そして新しいラチェットプレートを取り付けます。
こちらは削り出しで整形されていて、ラチェット部分の信頼性が高く安心して使えます。
ただし純正とはリベット形状が異なるため、クラッチシェル内側からのカシメとなります。
リベットのカシメについては、ハンマーで叩いてカシメる方法があります。
が、当店ではより正確にカシメるため、専用治具を製作して油圧プレスで作業しています。
なお、クラッチのベアリングに引っ掛かりが有ったので、日本製の物に交換しておきました。
あとはキックの機能に支障が無いか、動作を確認しながら組み立てていきます。
こちらはクラッチスプリング圧縮用の専用工具です。年式ごとにいくつか専用工具が必要です。
プライマリーカバーを閉じたらクラッチの調整です。
アジャストスクリューの突き当りから〇回転戻し…といった単純な調整ではありません。
基本は一緒ですが、年式ごとに微妙に調整方法が異なりますので、不調の際はご相談下さい。
そして全ての作業が完了しました。結果は…
ギアがしっかり噛み合い、100kg超の私が乗っても抜群の安定感です。
これでキック抜けによる逆ヒザの心配をせず、思いっきりキックを踏み下ろせます。
柏崎市のN様、ご依頼ありがとうございました。
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