2004年式FXD ダイナスーパーグライドのオイルパン、エンジンオイルドレン穴のねじ山に入ったクラックの修理をご紹介します。

こちらはお問い合わせの際にお客さんからお送り頂いた画像。

パッ・クンチョ。応急のシリコン盛りで対処している間に漏れは無かったそうです。
とは言えボルトにトルクが掛けられず脱落したり、クラック拡大の危険も…。
万が一のリスクを考えると早めに修理しておくに越したことはないです。

クラックの状態を確認する

オイルパンは車体から取り外し、単体でお持ち頂きました。

ある程度洗浄して頂いておりましたが、更に入念に洗浄。

その後サンドブラストでクラック部の塗装を剥離します。

綺麗な状態で確認すると開口部寄りの隙間は結構拡がっていました。

浸透探傷剤にてオイルパンの内側からも状態確認。

染料が赤く滲んでいる部分がクラックで、内側への貫通は少ないように見えますが…

TIG溶接でクラック部にアルミを肉盛りする

外側からクラックを掘り下げていったところ、貫通していないように見えた部分も結構な深さまで進行していました。
また、クラックの進行方向が外見と内部で異なる部分もあります。

当初はクラックに沿ってV字に切開し、溶接を貫通させてクラックを修理する方針でした。
しかし隠れたクラックやピンホールが残る可能性が高いためプランを変更します。

クラック周辺を大きく切削して溶接で埋め直し、更に肉盛りで強度を稼ぎます。
純正は壁面がかなり薄く、タイムサートの加締めに耐えられるか微妙でした。
クラック修理中のクラック発生は精神的ダメージがデカいので…

関連記事：1975年式XLCH クランクケースクラック修理 #1

タイムサートでねじ山を作る

タイムサートを使用して純正より強度の高いねじ山を作ります。
すみません、加工後の状態しか撮影していませんでした。

ドレンホールやプラグホールなど、密閉が必要な箇所にヘリサートやリコイル等のコイル状補修材を使用している場合がありますが、当店の考えではこれはNGです。

母材とコイルを圧着できず、またコイルのねじ山間も隙間が開いているため、そこから漏れが発生する可能性が高いです。

また、こちらのタイムサートは穴の端面を45°に面取りしているのですが…

それはドレンボルトにOリングを使用する構造のためです。
ねじ穴とボルト間は全周Oリングで密閉され、オイルの伝い漏れを防ぎます。
ちなみにOリングの潰れ代も調整して加工しています。

その点、コイル状補修材は巻きの境目で必ず段差が生じ、固定が弱く面取り加工もできないことからOリングでの密閉は不可です。

これがタイムサートとコイル状補修材の大きな違いです。
当然使用箇所での相性もあり、コイルの方が手間も精度も省けて楽なんですけどね。

合わせ面の仕上げとシーリング

ドレン穴周辺の肉盛り部分の形状を整えた後、合わせ面も仕上げておきます。

加工前後の違いが伝わりづらいため、最近”Beforeは着色”というワザを編み出しました

20年以上前の車両ですから経年の変形は多少あれど、溶接による歪みはなく一安心。

純正切削加工跡は一部落とし切れませんでしたが、ガスケットで十分対応可能でしょう。

最後に保険のシール塗料を塗布して完成です。

年に数回オイル交換されるそうで、タイムサートにより耐久性もアップして一石二鳥ですね。

今回の作業費用

なお、今回ご紹介した作業は下記の費用となりました。

項目	金額(消費税込み)
部品代	–
技術料	￥38,500
合計	￥38,500

福島県よりお越しのT様、ご依頼ありがとうございました！
またのご来店をお待ちしております！

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