皆様お久しぶりです。全くブログを更新できずにすみません…(汗)
このままだとネタがお蔵入りしてしまいそうなので、頑張って書きます。
タイトルが大げさですが、エンジン関係の作業をご依頼頂いたお客様向けの記事です。
作業紹介の補足的に、図も加えて分かりやすくまとめてみたいと思います。
・1979年式FLH エンジンオーバーホール#1
・1979年式FLH エンジンオーバーホール#2
・1982年式FXB エンジンオーバーホール#1
上記の関連記事なので、ショベルヘッドをベースに話を進めていきます。
フライホイール・クランクと芯出し
そもそもフライホイールって何?
雑誌などでも見かける言葉、Flywheel:フライホイール。日本語で言うと『はずみ車』です。
機械全般で言えば、運動エネルギーを蓄えるための回転部品のことです。詳細は後述します。
ハーレーで言うところのフライホイールは、クランクシャフトを構成する円盤状の部品となります。
使い方は大雑把なようで、クランクを指してフライホイールと呼ぶ場合も見受けられます。
ショベルヘッドのクランクの構造
クランク『シャフト』なのに円盤?とハテナが浮かぶ方もいるかもしれません。
ということで、↓の画像がショベルヘッドのクランク略図です。なお車体右後方からの視点です。
ショベルヘッドのクランクシャフトは、軸となる左右シャフト(ピンク)をフライホイール(青)とクランクピン(緑)で連結する5分割構造です。
各連結部はテーパー穴となっており、固定用ナットを締めるとクサビ効果で強固に連結されます。
中心軸からオフセットされたクランクピン(緑)にはコンロッドが接続され、ピストンの上下運動を回転運動に変換する構造となっています。
クランクの芯出しとは?
ショベルヘッドのクランク構造はなんとなくイメージして頂けたと思います。
要するに5個の部品を組み立て、1本のシャフトとして使用するわけです。
一見簡単に組めそうですが、組み立て時に以下のような歪みが発生する場合があります。
クランクピンの反対側が狭く(または広く)、フライホイールがハの字に変形している状態。
※ちなみにシャフトとクランクピンを通過している白線は基準となる中心軸です。
クランクピンを軸にして、フライホイールがねじれている状態。
サービスマニュアルではこの2パターンが紹介されています。
もちろんマニュアルの記載以外にも色々パターンがあります。
クランクピンが斜めになって、フライホイールの中心が合っていない状態。
フライホイールに対してシャフトが曲がっている状態。
フライホイールが傾いている状態。一見シャフト同士は同軸に見えます。
しかし、回転に伴ってクランクピンとコンロッドには左右への振れが発生してしまいます。
上記の歪みが90°ずれて起こった状態。
シャフト同士は同軸ですが、上から見るとクランクピンが基準線に対して傾いてしまっています。
回転時にはコンロッドに捻じれるような動きが発生します。
今回紹介したのは一例で、それぞれが複合して発生する場合がほとんどです。
また、メーカー組立時の問題や長期の使用でテーパー穴が変形している場合もあります。
これらの歪みを修正し、1/100mm単位の精度で組み上げる作業がクランクの芯出しです。
1台ごとに状態が違うので、場合によっては大変苦戦する箇所でもあります。
クランクベアリングについて
クランクの精度が上がったなら、それを支持するベアリングもカチッとしたいところですね。
やや部品点数が多いですが、構造を簡単に説明します。↓はベアリング周りの略図(断面)です。
シャフト右はローラーベアリングとブッシング(すべり軸受け)、シャフト左は対になった円錐型のテーパーローラーベアリングで支持されています。
要はクランクシャフトの荷重を左右3箇所のベアリングで支持しているということです。
そしてシャフトの中心軸に合わせて、ベアリング内径も中心が揃っている必要が有ります。
左ベアリングを基準に、右ベアリングとブッシングのライン出し加工を行い仕上げます。
これでシャフトとベアリング内径の中心は揃いましたが、次に重要になるのはクリアランスです。
スムーズに動作させるため、オイルが入る隙間を作るため…というだけではありません。
エンジンが発生する荷重を均等に支持できるか?という点が肝心です。
エンジン動作時、クランク本体はベアリング内径の中心に浮いている訳ではありません。
ピストンからの圧力などにより、ベアリング内径に押し付けられた状態で動作します。
画像のシャフト下部のように、荷重を受けた箇所はクリアランスが0になります(油膜分は除く)。
この時、各ベアリングのクリアランスが均等であればシャフトには歪みが発生せず、中心軸を保ったまま荷重を受けることができます。
反対にクリアランスが不揃いであれば荷重を均等に受けることが出来ず、芯の出たシャフトを歪ませる力が働くことになります。
箇所ごとではなく、全体のクリアランスを揃えることでシャフトを均等に支持することが出来ます。
ライン出し+クリアランス設定=ベアリングの芯出し、といったイメージでしょうか。
長くなってしまいましたが、フライホイールとクランクの芯出しについてはこんな感じです。
次はフライホイールのバランス取りについて書いてみたいと思います。
※念のため
今回書いたことは、マニュアルに載っていないことを未熟なりに考察した内容です。
作業している人ごとに考え方が異なって当然ですし、自分も後々考えが変わるかもしれません。
何事も『絶対』は有り得ないと思いますので、店主視点からの一意見として捉えて下さい。
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